楽に生きよう。ネコみたいに。

生きづらいひとへ。心理療法なカウンセリングとその周辺のお話。

アダルトチルドレンを克服したD子さんのお話② #35


こんにちは。
カウンセラーのながしまです。


今回は、前回に引き続き、アダルトチルドレンを克服したD子さんのカウンセリングの後半について、ご紹介していきます。


~カウンセリング後期~

■症状
・不安感や落ち込みが軽減
・睡眠の時間と質が向上
・昼寝時間が短縮
・友人との外出ができるようになり、楽しめる
疲労後の回復時間が短縮
・感情の起伏が小さくなった
・泣くことが少なくなった
・生活リズムの回復
・文化的生活、人間してる(本人曰く)


■母について
・本当は、ただ「そうだったの」って言ってもらいたかった。
・褒められたかった。

・(わざわざお母さんを憎んだり、敵と考えたりしなくていい。そのための気づきじゃないって言われて)
 私には悪意や敵意はなかったんだってわかって、ほっとした。
・こういうのを「自己理解」というんだ。
・「単なるポジティブシンキング」じゃなくて、気づけた意思を続けてけばいいんだと自然に思える。

・母もまた、アダルトチルドレンだった。
・自分で気づいてカウンセリングでも受けなきゃ変わらないんだから「私に何かする必要はもうないな」と割り切れた。


■思考の変化
・考えすぎたり迷ったりすることに飽きてきた。いいことなんだよね?
・ずっと何かに許されたかった。誰かのことを信じてたかったってわかった。
・納得できる「よく頑張りました」が欲しかっただけかも。

・友達とか他人に対して本音が言えなくて、嘘つきみたいな苦しさ、罪悪感がいつもあった。
・「ムダなニコニコ」はしなくていい。

・気負うことはない。優先順位1位は自分。
・(「ちゃんと」や「しっかり」が口癖って指摘されて)もっとズボラでいいんだって思えるようになった。

・気分が落ちると、自分の思考で自分を傷つけていた。今は、傷つけるのを自分で止められるようになった。
・不安はあって当たり前。ゼロなんてありえないって知ったのが大きかった。
・客観視とか自分軸がどういうものかとか、その大切さもわかるようになってきた。


■休職について
・(傷病手当金の説明や会社の制度の確認をされたり、確認方法も先に話し合っていたので)
 聞きたいときに人事や上司に安心して聞くことができた。だから、休職の罪悪感や復帰の焦りが少なくて済んだ気がする。

・先に「心の体力」がついたと実感できたから、次は「身体の体力」って、順番に進めていくことができた。

・戻ったら何がしたいか、そのためにはどうしたらいいのかを考えてる。
産業医も入れた復職面談のことを考えると緊張はするけど、大丈夫と思える。

・リハビリ出勤で早く帰るのはやっぱり申し訳ないと思うけど、でも〈今はこれが私の仕事だ〉って考えられる。
・感情の動きや体の疲労度を、客観的に見られるようになった。



心理教育:
・『睡眠について』
・食事と栄養について
・アンガーマネジメント
・ストレスコーピング
・客観視、自分軸と他人軸
・リワークプログラム(後編)
・『非合理な考え方』と『権利章典

宿題:
・部屋の片づけ
・カウンセリング中に合意した内容に基づく、リワーク『計画書』の作成
・計画書に則った作業と休憩と通勤訓練の実施(段階的に)
・生活リズム表②へ更新
・リワーク『報告書』作成
・「新しい信念」について考える



いかがでしたか。

D子さんのように、「症状」に本来の問題が隠れてしまっているというケースは少なくありません。

ですから、その症状を巡る人間関係、特に親子関係を細かく分析することで、D子さんのようなアダルトチルドレンという根本の問題が見えてくることもあるのです。

ただし、人間関係は親子関係だけに留まりませんから、固定観念に囚われることなく、様々な人間関係について、柔軟に注意深く聴き出していくことが大切です。

そして、このブログでは全編2回のみのカウンセリング記録でしたが、D子さんはこの間、20回近く・約半年の時間を費やしました。
ここでは、その詳細はかなり割愛されています。

また、カウンセリングは個別のナマモノです。
そして、これらは、私の記憶と『いただいた言葉ノート』に記した彼女の言葉なので、意味の通じない表現もあったでしょう。
ただそれでも、彼女の抱えていた、母親や友人や職場への思いの変化は読み取っていただけたと思います。

彼女が終結の日にくれた言葉を。
「もしまた自己否定に陥ったら、ここに来た最初の自分を思い出すよ。
ずっと泣いてたんだもの、忘れたくても忘れられない。
もしかして思い出せなくなったとしても、貰った資料とリズム表とこのノートは絶対に捨てないから。
見返して、また頑張る。
だから、大丈夫。
それでも、もしもだめだったときにはまた会いに来るね」


彼女がそれまでの生きづらさを手放して、新しくて生きやすい自分の人生を創り、希望をもって歩き始めたことを、一緒に喜んでいただけたら幸いです。



f:id:rakuneko-naga:20200415002819j:plain



アダルトチルドレンを克服したD子さんのお話① #34



こんにちは。
カウンセラーのながしまです。


今回は、10年以上も前の冬から翌年の夏にかけ、アダルトチルドレンと向き合ったD子さんのお話です。


当時の彼女は20代後半で、単にうつ病患者として、医師の勧めのままにカウンセリングを受け始めた方でした。
その過程で、自らの内面にあるアダルトチルドレンに気づき、逃げずに向き合い、やがてうつ病も克服しました。
そして職場はもちろん、新たに拓いた『自分の人生』へと羽ばたいていきました。



~インテーク(初回カウンセリング)~

主訴:
秋ぐらいから、朝起きると涙が流れるようになった。
〈あれ、涙出てるな。どうした?〉自分でも訳がわからなかった。
だけど体が怠かったり、何だかつらくて、初めは遅刻してでも出勤していた会社にだんだん行けなくなってしまった。

他に、不眠、食欲不振、記憶力の低下、意欲・興味の減退


職歴:
入社7年目。半年前から繁忙期に入っていて、毎晩帰宅は深夜。
だけど元々忙しい会社だし、残業も慢性的なので、それほどキツイとは思っていなかった。
仕事はそれなりにやってきたけど、仕上げたとか出来たとかいう満足感はなくて、いつも自分を受け入れられずにいたと思う。


家族歴:
小学校低学年のときに両親が離婚。


➡ 
・休職中のため、リワークプログラムについて説明し、『生活リズム表』を宿題
・考えたり書くことが好きなので、『書きたいときだけ書く、簡単日記』を宿題
 (認知行動療法を視野に入れている)



~カウンセリング初期~

➡宿題の日記によく取り組んでいて、説明に希望もあったため、認知行動療法を導入。
 家族歴・成育歴について話すとき、母親がテーマになることが多く、その時はいつも泣き出した。


■休職してから体の怠さは楽になったけど、買い物とかで外に出なくちゃならないときがつらい。
・着替えや持ち物を準備していると、涙が出てくる。
・外に出るための自分を作るのがしんどい。
・怖くて寂しくてつらくてグチャグチャになっちゃって、手が痛くなるくらい壁を叩いたら落ち着いた。
・(怒り?)そうかもしれない。何に怒ってるんだろう?


■母は私を大切にしてくれているのに。私は母を助けられなかった。
・母はとても傷ついてきたから、信じていいのは自分と母だけ。

・でも… 体がしんどいから帰省できないってメールしたら、メンヘラの彼女みたいな返事が来て、怖かった。
 「お母さんも一人で苦しいから、あなたの助けが必要なのに!」って言われた。
・苦しくて、鬱病で休職中だってことを白状したら、「お母さんに気を遣わないで。心配でたまらない」って返事が来た。
・なぜだかわからないけど、帰らなくていいって思えたら、ほっとしてる。

→(ここへ来る前の自分が今の私を見たら?)「そっか~。すごいじゃん、思ってることをちゃんと言えて」って言うかな。
今までの私は、黙っている方が楽だったんだろうね。 



~カウンセリング中期~

■症状
・初期に比べたら、だいぶ元気になった。食べられるようになったし、訳もわからずに泣くことがなくなった。

■母について
・面倒だと思っていることを認めていいんだって思うようになった。
・当分会わなくても薄情じゃないよね? 
・「母のことを否定する勇気」が必要な気がする。
・傷ついてきたのは自分だった。
・母の期待には必死で応えていたのに、自分の期待はいつも叶わなくてつらかった。
・母から言われたことを考えていると苦しくなる。息も苦しくなる。
・もう、自分のことに懸命になっていいはず。


■休職について
・(スケーリング・クエスチョンにより、5と回答)もう少し休む必要があるんだね。
・休むからには具合が悪くなくちゃいけないって考えてたけど、少し良くなった今の状態でも復職はまだ無理。
・元気な時とそうでない時があるのがわかるようになった。
・頑張ったらできるんだろうけど、今はまだ頑張る必要はない。



心理教育:
・『薬について』
・『不安について』
・『呼吸法』(過呼吸抑うつセロトニンも含めて)
・『回復の過程』


宿題:
・10円貯金
・呼吸の観察
・呼吸法
・ストレッチ
・『3コラム』では、感情にフォーカスする
・「今日中に寝る」(起きる時間は何時でもいい)
・女優、ワルモノになってみる(「親」だと思うからつらいので、「ちょっとしんどい人」「苦手な人」と捉えて、「今までと違うこと」をしてみよう)



いかがでしたか?
初め、医師も本人も過重労働が原因のうつ病と考えていました。
もちろん、それは十分そうなのですが、彼女にとってそれは真の原因ではなく、単なるきっかけに過ぎませんでした。

もしも、あなたも何か生きづらさを抱えているなら、手始めに『書きたいときだけ書く、簡単日記』を始めてみませんか。
「漠然とした何か」が見えてくるかもしれません。
「自分を苦しめている本当のもの」に気づけるかもしれません。

変化は、気づくことから始まる のですから。

f:id:rakuneko-naga:20200414200954j:plain

不安について② #33



こんにちは。
カウンセラーのながしまです。


前回は多くの方を悩ませる『不安』という感情の正体について説明しました。
それにより、『不安』とは、人間が人間として生き延びていくためにDNAレベルに刻まれた、絶対に欠かすことのできない大切なものであるということを、ご理解いただけたと思います。

そこで今回は、その『不安』のもう一つの側面についてお話していこうと思っています。



2.不安の利点

例えば、あなたが資格試験を受検しようと決意した、と想像してください。

その受験日が来年の今頃であるならば、あなたにはまだ1年の期間があります。
この状況ですと、あなたに不安感はほとんどなく、心はかなりリラックスしています。
ですから、ややもすると勉強中に他のことに気をとられてしまい、なかなか集中することができなかったりします。
それどころか、明日、模擬テストが控えていたとしても、もしかしたら教科書も開かないかもしれません。
当然、模擬テストの結果は惨憺たるものとなってしまいますね。

ですから『不安感の不足した、リラックス状態』では、成績は上がりません。



その後、順調に準備を進めていって、受検日の1週間前あたりになると、ようやく緊張感が高まります。
すると同時に、集中力も高まって記憶力や問題解決力も上がり、勉強の効率が格段に上がってきます。

活動の効率を良好にする状態とは、神経がある程度張りつめて緊張はしているけれども、自分を保っていられる、『適度な不安』にある状態のことです。

つまり、『適度な不安』が注意力を高め、活動の効率を上げてくれるので、結果、良い成績をもたらしてくれるのです。



それが、試験の直前、不安が高まりすぎるとどうなるでしょうか。

例えば、鉛筆を持つ手は震え、配られたプリントに自分の名前を書くこともできません。
それによってますます不安は高まりますから、やがて設問が何を問うているのかも読み取れなくなってしまったり、しっかり暗記していたはずのことでさえも思い出せなくなってしまったりします。

注意力も低下させますから、普段であれば考えられないようなケアレスミスも引き起こしてしまうのです。

このように、高まりすぎた不安感は、さらなる不安へと関心を向かわせてしまいます。
そして高まりきった『過度な不安』は、注意力を散漫にし、記憶力を低下させ、結果、成績を下落させてしまうのです。



f:id:rakuneko-naga:20200330210227j:plain


以上のことから、成績や作業効率を上げるためには『適度な不安』の存在が必要不可欠と言えます。
『過度な不安』はもちろんですが、『不安の少ないリラックスした状態』でも、効果は期待できないのです。


不安障害の方やうつ病の方、あるいは気質として不安になりやすい傾向にある方は、とにかくすべての不安を恐れてしまい、本来は活動の効率を高めてくれるような不安ですら、恐れるようになったりします。

不安の症状に関心が集中して、不安に歯止めが効かなくなくなり、逃げ出したくなるほどの恐怖に駆られてしまうのです。
どれほど苦しいことでしょう。

ですから、そうした苦しみから自分を解放し、楽に生きるためにも、『正しい不安の理解』が必要だと、私は思っています。



不安は、絶対になくなりません。
そして、適度な不安は、成績や業務効率を上げ、生活の質QOLの向上に寄与します。
不安は、私たちが健全に生きていくために必要不可欠な、大切なものなのです。

だからどうか、「不安をなくす」とか「不安をゼロにする」なんて目標を自分に課さないでください。
どうか、不安を過剰に恐れないでください。

不安に侵襲されることなく、いい塩梅に共存していけるよう、不安を育てすぎないような方法を身につけていただきたいと願います。
カウンセリング場面で習得していただいている、そうした方法についても、今後、ご紹介していけたらいいなと考えています。


不安と上手に付き合いながら、人生を生きやすいものにしていってほしいと、心から願っています。

f:id:rakuneko-naga:20200330210617j:plain


不安について① #32


こんにちは。
カウンセラーのながしまです。


カウンセリングを受けている方に「今後、どうなりたいですか?」という質問をすると、多くの方が「不安をなくして、楽に生きられるようになりたい」と答えます。

過去の失敗体験や悲しい経験によって今を憂い、未来を不安に思っているのですから、これは至極当然の回答ですね。


ですが、この「不安をなくす」という目標は、誰にとっても到底到達できない、不可能な目標です。

そして、こうした不可能な目標を掲げているままでは、到達できない自分を責めるだけでなく、更にますます自己評価を下げていってしまうことにもなりかねません。


ですから、その目標を到達可能で現実に即した具体的なものに設定しなおすことは、カウンセリングを進める上でとても重要なことであり、継続していくための大切なモチベーションにもなっていきます。


そこで今回は、「ゼロにしたい」と願われがちな『不安』に関する2つのことを、できるだけわかりやすく説明していきます。





1.逃げるか戦うか反応 (逃走か闘争か反応)

私はいつも「太古の昔、人間が狩猟民族だった頃」を例えとして、以下の写真にある絵を、講義ではホワイトボードに、カウンセリングでは紙に描いて説明しています。

絵心が全くないので、ご覧のような棒人間と線描マンモスになってしまっていて、いつも笑われています。
こればかりは、いかんともしがたく。。。
どうぞご容赦くださいね。


f:id:rakuneko-naga:20200329183215j:plain


ご存じのとおり、そのころ人間は集落を作って生活していました。
マンモスを1頭倒すと、その集落の何日分の糧になったのでしょうか。

とにかく、男たちは石斧などの武器を抱えて、マンモスをしとめようとしました。
野に出てマンモスの群れを見つけると、ある1頭に狙いを定めます。
すると彼らは、呼吸を荒くし、心拍数を上げ、手に汗を握り、筋肉をギュッと緊張させ…
「今だっ」と一気に襲いかかりました。

あるいは、そうやって襲いかかってはいくものの、相手のマンモスからしてみても、こちらはいい獲物です。
タイミングを間違えば、人間がマンモス達の餌食になってしまいます。

ですから、呼吸が荒く、脈は走り、筋肉がギュッと緊張していれば、たとえタイミングを逸して逆に襲われそうになったとしても、すばやく退散することもできました。


しかしこれが、もしも呼吸は穏やかで、脈も静かに打っていて、筋肉はだらっと弛緩していたとしたら、どうだったでしょうか。

狙いを定めても、その場所に着いたときにはマンモス達は遠く彼方まで逃げ延びていたでしょうし、
あるいは逆に襲われるようなことになったなら、まんまとマンモス達の餌食となって消えてしまっていたことでしょう。



ここで気づいてほしいのが「呼吸が荒く、脈も激しく打っていて、手に汗をかいて、筋肉が緊張している状態」です。
これはまさに『不安緊張状態』のことですね。

あるいは他方の、穏やかで弛緩した状態。
これは『リラックス状態』を示します。


つまり、私たち人間は、このように『不安緊張状態』を備えてきたからこそ、現代まで生きながらえることができたのです。
リラックス状態だけであっては、どこかで淘汰され、現在を生きていることはなかったに違いありません。

このように『不安』とは、人間がその生を全うし、次に続けていくためにDNAレベルに刻まれた、重要で必須なものだったのです。



いかがでしたか。
今回の説明を読むことで、
「不安は絶対になくならない。不安は生き延びるために必要不可欠なものだったんだ。だから、無理になくそうとしなくてもいいものなんだ」
と理解してもらえたなら幸いです。



次回は、2.不安にもある利点 についてお話していきます。
お楽しみに。

f:id:rakuneko-naga:20200329220921j:plain


うつ病を克服したC男さんとアドラー心理学 #31


こんにちは。
カウンセラーのながしまです。



めんどくさがり屋の私は、入浴が億劫になることが多いため、お風呂に浸かりながら読書することを対策として、最近習慣づけました。

元来読書好きですから、風呂場に書物を持ち込むなんて不届き千万、冒涜だ!というお叱りの声が聞こえてくるような気がします。

ですが、忙しさにかまけて “積読” のままの書籍たちを見るにつけ、こちらの方が本に対してよほど失礼よね? と考えるようになり、以来、カバーを外して、表紙にラップを巻いて風呂場へ持ち込むという暴挙を重ねております。

おかげで本の山は解消され、読む楽しみに誘われ、夜毎いそいそと風呂場に通っている次第です。



さて、こうした悦楽を貪るここ数日の対象は、アドラー心理学で有名な『嫌われる勇気』でした。

中盤までは、いつものように “私” と照らし合わせて理解を深めていたのですが、終盤、幾度も “ある男性” が脳裏に浮かんできて、
「あぁ、彼とのカウンセリングはまさにこれだった」と思ったのでした。
当時の彼の頑張りを、カウンセリングがもたらした素晴らしい現実と共に知ってもらいたく、以下につらつら したためていこうと思います。




C男さんとのカウンセリング物語

彼はC男さん、30代の男性です。
うつ病と診断され、並行してカウンセリングも受けていました。
その内容は、とにかく過去の後悔と「親のせい」。。。



彼の父親は実業家であり、その地方では名士とされた方でもありましたから、長男である彼は、周囲も自身でも、後を継ぐのは当然だと考えていました。

しかし、彼は大学生活を送るうちに「このまま東京で就職したい」と願うようになり、就活に励んだ結果、希望のⅠT企業から内定を得ることができました。
ところが、このとき両親が強固に反対したため、彼は希望の職場をあきらめて、卒業後、父親の会社の社員として働き始めました。


一年が過ぎた頃、アルバイトの女性と交際が始まり、結婚も意識するようになりました。
しかし、ここでも、これを知った両親から反対され、彼女との交際も断念してしまいました。
そして、彼女がアルバイトを辞めると、だんだん何をするのも嫌になり、仕事も頻繁に休んでは、パチンコやゲームセンターで過ごすようになっていきました。
やがて希死念慮も口にするようになったため、母親同行で心療内科を受診したところ『うつ病』の診断を受け、休職に入りました。

生活については、大学卒業と共に父親が購入した彼名義のマンションで一人暮らし。
食事は母親が毎日差し入れている、という状況でした。


彼はカウンセリングの席に初めて座るなり、前述の後悔と両親の責任についての同じ内容を、ただひたすら語り続けました。
インテーク(初回面接)で欲しい情報を集めるどころではなく、2回3回と重ねてようやく生活状況まで把握できたような状態でした。


このように、同じ内容をただ繰り返し吐露し続けるだけで、一見何の進展も見られないような、回数ばかりを重ねていくケースも、時にはあります。
それがまさに医療上の『トラウマ』といわれるような場合には、その繰り返される無残な語りを無理にでも止めさせるべきか否か、と悩んだりもします。

ですが彼の場合はそうしたケースではありませんから、もういい加減、先に進めていきたいと考える段階でした。
そのため私は、なかなか先に進もうとしない彼を「後悔くん」と胸の内で呼んでいて、挙句とうとう、その状況を「考えようによっては幸せだと思いますよ」と言ってしまったのです。


いま思い出しても冷や汗ものの発言ですが、驚いたことに、彼はその次のカウンセリングから、思いも寄らない変化を見せ始めました。

毎回投げかけていた私の問いに注意を向けてくれるようになり、やがて幼い頃の夢を語り出したり、行動に移したり。
弁護士に憧れていたんだと、弁護士をしている親戚を訪ねたり。

彼の年齢や財力や縁故も、それは立派なリソースなので、誰憚ることなく頼り活用すればいいと私は考えていましたから、二人で知恵を絞り合って、いろんな宿題を考え出しては取り組んでもらっていました。


ある日。
着座するなり、彼が「小学校の先生になる!」と言い放ちました。
続いて、
「これが親の意見の反映されていない、幼い頃の本当の夢だったことを思い出したんだ。
そして、今でもなれるものなら、なってみたいと思っていることを確信した。
でも学部は政経だったから、教育学部に入り直さなきゃだなって、散々調べた。
そうしたら、年に一度、誰でも教員になれる門戸を、文科省が開いていることを知ったんだ!!」
と、一気にまくし立てました。


今回、ブログで書くにあたり再度調べてみて、確かこの『小学校教員資格認定試験』というものだったと思います。

実技では音楽と体育を選択した彼は、もう15年以上離れているからと、近所の児童が通うピアノ教室でバイエルから習い始め、
また、体育教室も低い跳び箱から一緒になって始めたと、元気に明るく笑うようになりました。

こんなに変化したのだからと、カウンセリングの終結を提案しても、「一人じゃ挫けるから」と間隔は延ばしたものの、定期的に通い続けました。


そうして、2回目の試験で見事合格を果たした彼は、次なる採用試験でまた苦戦を強いられたものの、そのまた2年後に無事採用の運びとなりました。
ここでいよいよカウンセリングは終結しましたが、その後もしばらくは、ふいに予約を入れては近況を教えにきてくれました。




いろんな心理学とカウンセリングと

『嫌われる勇気』の終盤にある以下の文章が、私に “後悔くん” を思い出させました。

~ 人生は線でとらえるのではなく、点の連続と考えて。
  線でないのだから、計画的な人生など不可能。
  目標など、なくてもいい。
  人生とは、くるくるとダンスするように生きる、連続する刹那。
  “いま、ここ” を真剣に生きること、それ自体がダンス ~



過去を悔やんで、親を責めているだけだった「後悔くん」は、誰も想像すらしていなかった小学校の先生になって、今もどこかで輝いています。

人生の設計図など持たず、親の敷いたレールを進み続けていた “過去” を抜け出して、辿り着いた “いま、ここ” を、今も真剣に、そして楽しく踊り続けていることでしょう。



今回、アドラー心理学から語り始めましたが、私自身は一つの学問や療法に拘泥していません。
例えば、アドラーが否定する “トラウマ” にも意味はあって、それを置き去りにしてはいけないと考えています。
けれども、フロイトのように原因をほじくり返すことだけが有効とも考えていません。


私は、喩えるなら、カウンセリングはドミノ倒し、と思っています。
カウンセラーは、あくまでも最初の1枚をちょんと軽く押すだけ。
そこから先には、想像もつかない美しい絵、素晴らしい未来が広がっているのです。

然して、この「ちょんと押す」の押し具合とタイミングの塩梅がものすごく重要で、そしてとても難しいから、これから先もいろんな分野で研鑽、精進、経験、等々、、 愚直な努力を真摯に続けていきたいと思っています。


カウンセリングを信じてみませんか。
そこには、絶対に大丈夫!な、ありのままのあなたが必ずいるのですから。

f:id:rakuneko-naga:20200322185812j:plain


うつ病や不安障害に効く認知行動療法は自分でできる。⑦新しい『信念』を持とう(最終回) #30



こんにちは。
カウンセラーのながしまです。



さて、ここまで認知行動療法を進めてきたことで、自分自身の『自動思考』を掘り下げ、『認知の歪み』を把握することができたと思います。

そして、この認知の歪み、すなわち『歪んだ認知』のさらに下には『絶対的信念』といわれるものがあります。
認知の一番深いところに隠れて存在しているのです。


認知を図式化すると、下のようになっています。


    自動思考
     ▲
   歪んだ認知
     ▲
   絶対的信念



絶対的信念とは、自分や他人や世界についての心の本質的欲求です。

生きづらさを感じている人は、常に、評価や条件や期待を伴わせています。
これがあるからこそ「自分を追い込んだり苦しめたりするような、パターン化された決まった考え方」をしてしまっているのです。

具体的には、以下のとおりです。


1.自分が他人から:
  認められたい、愛されたい、受け入れられたい、褒められたい、大事にされたい、信じてほしいetc.
 
2.他人が、世界が:自分の思い通りであってほしい



このような絶対的信念は、たいてい子どもの頃からもっていると言われています。
子ども時代に継続的に体験したり、心の傷として残るような状況で固定化した信念は、自分を守るための真実として存在してしまうのです。

ですが、そうした信念は、取り巻く世界が広がった成人になった後でも役に立つものばかりではありません。
自分を守ってくれていたはずのものが、やがて無意識に自分を苦しめてしまう。
そんなことが往々にして起きてしまっています。


ここまで到達して、いよいよ私たち(クライエントとカウンセラー)は、最終段階の『新しい絶対的信念』の構築を目指します。

他人の評価に惑わされずに、「自分自身がどうしたいか。どうあればいいのか」を検討していくのです。

これも以下に具体的に挙げておきます。


 1.他人の評価はどうあれ、無条件に、自分を:
   認めたい、愛したい、受け入れたい、好きになりたい、大事にしたい、信じたいetc.

 2.他人の評価はどうあれ、自分はどうあれ、無条件に
   他人を、世界を:認めたい、愛したい、受け入れたい、褒めたい、大事にしたい、信じたいetc.
   他人に、世界に:優しくしたい



いかがですか?
この最後の作業はとても難しいと感じるかもしれません。

実のところ私も、この段階を一人きりで完結させることは難しいかもしれないと感じています。

ただし、書物はそれぞれ「この作業も決して一人で行うことは不可能ではない」としています。

そして、それと共に「そのためには自動思考を変えるより長い時間がかかる。新しい信念を確信できるまでには時間をかけてたくさんの根拠を集める必要がある」とも謳っています。

いずれにせよ、努力は必要なのです。


また、こうしたカウンセリングだけでなく、休職者への職場復帰支援『リワークプログラム』に組み込んで実施していくときも、この認知行動療法の枠組みだけでは解決しえない問題が明らかになるケースにも数多く接しています。

ですから「リワークはただ日中を規則正しく過ごせるリズムと体力が備われば安全な復職を果たせるわけではない」と考えているのですが、これに言及すると話が反れてしまいますので、今後リワークをテーマにしたときにお話ししようと思います。


最後にきて否定的な意見を述べてしまいましたが、絶対的信念の強さは人それぞれですから、『反証』や『適応的思考』の習得段階で、歪んだ認知の修正が図れる人も、実際にはいらっしゃいます。

ですから、自分だけで新しい信念を構築することも不可能ではないと思っています。



ぜひ一度、認知行動療法に取り組んで、自分の認知の傾向を客観的に把握してほしいと思います。

そして、そこから先で、もしも行き詰まったら、カウンセリングという安心安全な枠組みの中で、カウンセラーという安心安全な人間と一緒に、自分を生きづらくさせている問題の解決に踏み出してほしいと願うのです。


7回という長きにわたりお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
心から感謝しています。


すべてのひとが、自分の人生を楽に、楽しく愉快に幸せに生きていけますように。


f:id:rakuneko-naga:20200213192829j:plain



うつ病や不安障害に効く認知行動療法は自分でできる。⑥『認知の歪み』を知る #29


こんにちは。
カウンセラーのながしまです。



前回までのブログ #14・15・16・25・28 によって、認知行動療法で取り組む『7コラム』が終了しました。

初めて取り組んだ方は、1枚を仕上げるだけでもかなり大変だったと思います。
お疲れさまでした。

ただ、この認知行動療法は、生活する様々な場面で湧きおこる負の感情や思考と向き合って、
何度も繰り返し取り組むことが大切です。

諦めずに何度も繰り返し取り組むことで、ようやく効果を発揮し始めるのです。
ですから、努力がとても必要となります。


そうやって何度も繰り返していくうちに、自分に、ある「思考のクセ」が存在していることに気づきます。
その「思考のクセ」を認知行動療法では『認知の歪み』といっています。

歪んだ認知があるために、間違った受け止め方をしてしまって、多くのストレスを抱え込んでしまいます。
ということは、その歪んだ認知を把握して修正することができれば、ストレスは軽減し、人生が生きやすくなっていきます。

『7コラム』に数多く取り組んできたからこそ見えてきた『認知の歪み』。
ここでは10のパターンに分けて説明します。




認知の歪み


①全か無か思考(100か0か思考、白黒思考、二分法思考)

良いか悪いか、できたかできなかったか、好きか嫌いか、正しいか間違いかなど、二つのどちらかでジャッジしてしまう思考。
中間の、あいまいな、グレーゾーンの存在を認めない。

例)・1つでも失敗したら、全部失敗したのと同じ。だから1つのミスも許されない



②個人化(自責思考または責任転嫁)

悪いことや上手くいかないことが起きたとき、すべて「自分の責任だ」とか「自分が悪かったんだ」と考えてしまう。
たとえ、他者の責任や、誰のせいでもない偶然による事故など、コントロールできない出来事であったとしても。

或いは逆に、全てある個人のせいと考える場合もある。

例)・チームの失敗は、私の契約が足りなかったせいだ
  ・チームの失敗は私のせいじゃない。B男が全部悪いんだ



破局的認知

根拠もないのに、「将来、最悪の結果が訪れるにちがいない」と確信してしまう。
不安障害に多い。

例)・昇進したら、きっとトラブルに巻き込まれて、そのうち降格されてしまうにちがいない」
  ・帰宅してしっかり手を洗わないと、絶対に怖い感染症にかかって死んでしまう



④感情的決めつけ

事実を無視して、そのときの感情のままに決めつけてしまうこと。

例)・不安なとき:数学で複雑な問題を解いたのに、「悪い結果にちがいない」と推測する
  ・寂しいとき:用事があるからと断られたのに、「自分が嫌われているからだ」と思い込む
  ・イライラするとき:「B男がダメな奴だからだ」と決めつける



⑤べき思考

自分や他人や世界は「こうあるべき」と思っている。
頑なな信念、ルール的な思考。
まじめで几帳面な人や、うつ病に多い。



⑥心のフィルター(選択的抽象化)

ものごとの全体を見ることができず、細かいごく一部に注意を集中させて、こだわり続けてしまう。
良い面を無視して、悪い面ばかりを見てマイナスに考えてしまう。

例)・先生やクラスのみんなから褒められたのに、たった一人に否定されたことで、「やっぱり自分はダメなんだ」と思い込む
  ・今つらいために過去の良かったことを忘れて、「人生にいいことなんて一つもない」と考え、悪いことばかり思い出す



⑦過度の一般化

わずかな出来事から、全てがそうであると一般化しすぎてしまう。

例)・大学受験で1校に落ちたとき、「この先何校受けたって落ちるにちがいない」と考える



⑧過大評価と過小評価

さほど変わらない状況なのに、根拠なく高く評価したり、低く評価したりしてしまう。
他人には寛容なのに、自分は極端に厳しく評価する。

例)・自分が失敗すると「やっぱり私はダメなんだ」と思い、同じことを他人がすると「仕方ないよ。大したことない」と慰める



⑨ラベリング(レッテル貼り)

多様な側面を大胆に単純化し、レッテルを張ること。
ネガティブなイメージを固定化してしまう。

例)・私は「ダメな母親」だ
  ・B男は「仕事ができないヤツ」だ
  ・夫は「人の話が聞けない人」だから、話してもムダと決めつける



⑩結論への飛躍(推論の飛躍、恣意的推論)

ある状況下で、適切な論理展開をせずに、ネガティブな結論に一気にジャンプしてしまう。

(a)読心的推論

他者に対する認知の歪み。
「相手は〇〇と考えているはずだ」と決めつける。

例)・B男は私のことを「変なヤツだ」と考えているはずだ


(b)予言的推論

将来に対する認知の歪み。
「将来は必ず〇〇が起こるに違いない」と決めつける。

例)・私は一生不幸なんだ。悪いことばかり起こるにちがいない




いかがでしたか?
当てはまる!と感じたものはなかったでしょうか。
もしあったなら、その番号に〇をつけてみてください。

一つだけではないかもしれません。
カウンセリングの場面では、全てに〇がついたなんていう方も多くいらっしゃいます。

しかしこれは、悪いこと、ダメなことなどではありません。

それだけ多くの歪んだ認知を抱えながら生きてきたということ。
とても生きづらかったと思うのです。

ですから、「よく張って生きてきたね」と、自分自身をねぎらって、褒めてあげてほしいと思います。



次回は『認知行動療法』の最終回です。

今回把握できた自分の思考のクセ、つまりは『認知の歪み』から、絶対的信念『スキーマ』を理解します。
そして、この先の自分が生きやすくなるための方法論をご紹介していきます。

お楽しみに。



f:id:rakuneko-naga:20200210010401j:plain


うつ病や不安障害に効く認知行動療法は自分でできる。⑤根拠と反証 #28



こんにちは。
カウンセラーのながしまです。


今回は認知行動療法の要となる『根拠』と、醍醐味である『反証』および『適応的思考』について説明します。


f:id:rakuneko-naga:20200124003435j:plain



1.根拠


1)感情を左右する、最も強い自動思考=【ホットな思考 ~#25】の理由となる、客観的事実

2)あくまでも「事実」であって、解釈や想像ではない。
 客観的な事実。自分の受け止めや意見ではない。

 〇 「Nちゃんが私をじっと見つめた」は、事実。

 ✖ 「Nちゃんは私を変だと思ってじっと見つめた」は、
   Nちゃんが「B子は変だよ」と口に出したのでなければ、事実ではない。
   黙って見つめられただけなら、相手の考えていることがわかったように思えても、
   それはただの想像事実ではない



このように、人は「思い込み」で、自分の思考を正しいと決めつけてしまうことがあります。
 
ですから、怒りや悲しみといったマイナスの感情に支配されたとき、「それを裏付けるこの『自分の考え』の根拠はどこにあるんだろう?」「自分の感じたことや考えは、本当に正しいのだろうか?」と、客観的に評価してみることが非常に重要です。

自分の意見ではなく、『客観的事実』や『経験』を見極めるのです。

つまりは、『自分の考えや思い込み』と、実際にあったこと『事実』を客観的に見て区別すること。
切り離す作業です。

この作業は、気分が高ぶっているときにはとても難しい作業ですが、自分の思考を客観視するための『要』ですから、頑張って取り組んでいただきたいと思います。





2.反証


1)反証とは、自動思考と矛盾する事実。反対の証拠。
 自動思考は正しくないと否定する根拠。


2)新しい情報。見逃していた情報。ちょっとした情報。
 これが加わるだけで、ものの見方が180度変わり、不快な気分ががらりと変わる。

例① B子がトイレから戻ると、友達が小声でひそひそ話していた。
    ↓
   B子は悲しくなって、帰ろうとする。
    ↓
   背を向けてドアに手をかけたら、名前を呼ばれた。
   B子が振り向くと、花束を持ったNちゃんがいて、みんなで「お誕生日おめでとう!」と笑ってくれた。
    ↓
   B子は嬉しくてたまらなくなり、「ありがとう」と言って泣き出した。


3)反証を見つけ出す手がかり:自分に以下の質問をする。

①もし家族や親友がそんな考えをもっていたら、どう言う?
②自分がその考えをもっていると知ったとき、家族や親友は何と言ったの?
③未来の自分が、そんな考えをもつ今の自分を見たら、何て言う?
④その考えにとらわれたとき、何をしたら気持ちが切り替わった?



はい、お待たせいたしました。
この『反証』からが、認知行動療法の醍醐味です。

人は、悪い方向に考えているときには、たいていそれを裏付けてあげるようなことばかりに目が奪われがちです。

それを、用意された質問を自分に投げかけてみることによって、見落としていたプラスの『事実』を見つけ出すのです。

そして、ようやく日の目を見た事実達は、必ずや、あなたの気分をプラスの方向へと導いていくことでしょう。





3.適応的思考

1)根拠と反証の双方をじっくり眺めて、浮かんできた新たな考え。
  
 浮かんでこないときには、根拠と反証それぞれを要約して、「でも・だが・そして」で繋いでみる。


2)単なるポジティブシンキングではない。

  単なるポジティブシンキング:友達は私を必要だと言ってくれないけど、どうってことない!

  適応的思考:友達は私を必要だと言わないけれど、私と一緒に遊ぶことは楽しんでくれている。




4.今の気分をスケーリングしてみる
1)思考記録表(7コラム)の『気分①』がどのように変化しているかを測り、『気分②』へ書き込む。

2)無理のない適応的思考が得られれば、不快な気分は確実に下がっていく。





これで認知行動療法の方法についての説明は終わりです。

次回、ここから見えてきた自分の『認知の歪み』を把握し、歪んだ絶対的信念(スキーマ)を見つけます。
そして、『新しい信念』を創造していきます。

お楽しみに。

f:id:rakuneko-naga:20200124004142j:plain


マインドフルネスのやり方。うつや不安や痛みを手放して、生きやすくなるために。#27


こんにちは。
カウンセラーのながしまです。


前回はマインドフルネスについてご説明しましたが、今回はその方法である『マインドフルネス瞑想』と具体的なやり方について、お話しします。




『瞑想』と『マインドフルネス瞑想』の違い


「いま、この瞬間に気づく」という点においては、瞑想もマインドフルネス瞑想も違いはありません。

ただし、『瞑想』はその気づくこと、瞬間瞬間の体験に注意を向けることだけのために行うものだといいます。
行うこと自体が目的です。


比して『マインドフルネス瞑想』は、宗教色を排した、注意を集中するトレーニンであり、意識を呼び起こす方法であり、セルフヘルプの方法として位置づけられています。
目的というよりも、手段としてとらえられています。

けれども、マインドフルネスも、余計な期待や評価を持たずに、ただ自分が “存在すること” や “いま、あるがままの自分” に気づいて受け入れることを大切にしています。

これについては、J・カバットジン博士が著作の『マインドフルネスストレス低減法』の中で、「マインドフルネス瞑想法の基本的な7つの態度」として紹介しています。
機会があれば、ぜひ読んでみてくださいね。


たとえ目的そのものであっても、手段であっても、双方に優劣はないと、私は考えています。
今までないがしろにしてきた自分自身に気づき、ありのままの自分を「それでいいんだよ」と受け入れ、心から認め、瞬間瞬間の自分に意識を注いで、大切にしながら生きていく。
それが、豊かで実りある幸せな人生に繋がっていくと思っています。




『マインドフルネス瞑想』のやり方

ここでは、私がカウンセリング中に行っている方法をご紹介します。


①背筋を伸ばして座る

 椅子でも、あぐらでもよい。
 目は軽く閉じるか、薄く開けてぼんやりと前を見る。
 手は力を抜いて太ももの上に置く。

 ※顎を引いて背筋を伸ばすと、自然に肩の力が抜けて、入れようとしてもなかなか入りません。


②深呼吸

 鼻から大きく吸って、口からハァ~と吐く。
 3~5回程度。気持ちいいと感じる回数で。

 パニック障害などの場合の呼吸法(呼吸コントロール)ではないので、吐くときを長めにというような指示はしていません。


③平常時の「鼻呼吸」に戻す

 鼻から吸って、鼻から吐く。
 呼吸が深くても、浅くても、どちらでもいい。
 
 ※大切なのは、注意の質です。

 おへそのあたりに注意を向ける。慣れるまでは軽く手を添えてもいい。
 息を吸ってお腹が膨らんだら「膨らみ」、息を吐いてお腹が縮んだら「縮み」と、心の中で確認する。
 「膨らみ、縮み、膨らみ、縮み、、、」
 
 ※複式呼吸が難しい場合は、胸でも鼻腔でも、呼吸を感じられるところに意識を向けてください。


④意識が呼吸から離れて、考えていたことに気づいたら、再び呼吸に意識を戻す
 意識が離れていた、思考していたということを、「悪い」「ダメ」と評価しない。
 離れていたことを、ただ、ありのままに受け入れるだけ。

 姿勢が前かがみになっていることに気づいたときも、評価せずに、ただ直す。

 ※「考えてはいけない」や「頭を無にしなければいけない」は思い込みです。
 ※思考は出てくるもの。無理に止めようとするのは、心臓を止めようとするようなものです。
  空に浮かぶ雲のように、川を流れていく葉っぱのように、思考は次から次へと浮かんでは流れていくのです。

 ※思考が離れていたことに気づいて、呼吸へ戻る。
 この「瞬間に気づいて、戻る」ことが、非常に大切で意味のあることです。


⑤まずは以上を10分程度、毎日行う
  
 マインドフルネス瞑想が終わったら、どんなふうに感じているかを観察する。
 
 ※実施時間は絶対ではありません。慣れてきたら、延ばしていってみてください。
 
 


いかがでしたか。
最初は「呼吸に意識を集中する」ことが難しいかもしれません。
けれども、あきらめずに続けていると、必ず変化した自分に気づくようになります。

自分の感情や思考に気づき、それに巻き込まれることなく、自分軸に戻って、生きやすくなれるのです。

おおらかな気持ちで、しばらく取り組んでみてくださいね。

だって、二か月もすれば、脳みそは変わるんですから!


f:id:rakuneko-naga:20200103234242j:plain


マインドフルネスが脳を変える。うつや不安や痛みを手放して、生きやすくなるために。#26


こんにちは。
カウンセラーのながしまです。

今回は『マインドフルネス』についてお話しします。



近年、グーグル、アップル、フェイスブック、ヤフー、メルカリ、丸井グループなど、多くの企業が、続々とマインドフルネスを導入しています。

また、ビジネス界だけでなく、医療・福祉の現場でも取り入れられるようになってきています。

マインドフルネスが、これほど注目を集めている理由には、
①集中力・生産性の向上
②問題解決能力の向上
③ストレス低減
④良好な人間関係の醸成
などがあるといわれています。


そして私自身、まだ一年ほどですが、実際に続けているうちに、
①イライラすることが顕著に減少した
②自分の感情に、客観的に気づけるようになった
③その感情に左右されないように、と考えるようになった
④体の凝りや痛みや変化に気づき、早めに対処ができるようになった
⑤ストレスを感じることが軽減した
⑥さらにポジティブで前向きになった

等々、明らかに感じられるプラスの変化がありました。
これらは自信を与え、生きやすさを実感させ、人生の質を上げてくれます。


そこで今回は、なぜマインドフルネスなのか? 
そもそもマインドフルネスとはどういうものか? 
どんな効果があるの? どうしてそんな効果が上がるの? 
など、その意味や定義、効果、そして方法について、詳しく説明していきます。




マインドフルネスの歴史とエビデンス

マインドフルネスは、1979年にジョン・カバットジン博士が、マサチューセッツ大学医学部内にセンターを開設し、
医学的治療が困難であった慢性疼痛の対処法として、後にご紹介する『マインドフルネス瞑想法』を取り入れました。
以来、乾癬や高血圧、過食などの食行動の問題や、パニックなどの不安障害といった心理的な問題にも成果を上げたことから、瞬く間に世界へと普及していきました。


以降のマインドフルネスによる効果についての研究を、少しご紹介します。

・1998年発表 乾癬患者の瞑想群は、瞑想を行わない統制群に比して4倍の治癒をみた
ウィスコンシン大学での研究では、EQ(心の知能指数)が瞑想群で高くなった
・インフルエンザ予防接種において、瞑想群では免疫系における抗体反応の強化が見られた 

など。


また、マインドフルネス瞑想による脳の変化が、fMRI検査の画像によって、明らかにされてきています。

扁桃体(怒りの中枢。脳のハイジャックと呼ばれる)の活動性を抑制
前頭前野(脳の司令塔。冷静に考え、処理する部位。扁桃体のブレーキ)の活動性が上昇


f:id:rakuneko-naga:20200103104031j:plain


このように、驚きの脳の変化が実際に起こっています。
さらにその脳の素晴らしい変化について言及する前に、まずはマインドフルネスについて、少しお話しします。



マインドフルネスとは、“いま” という瞬間を “意識的” に生きること

私たちはもちろん、現在(いま)を生きています。

けれども、その現在は、厳密な “いま、この瞬間” ではありません。
私たちはその多くを、思考にとらわれて過ごしているからです。
そして、その思考する対象はいつも、“過去“ や “未来” です。

「あのとき、こうしておけばよかった」とくよくよするのは過去のことですし、
「また嫌な思いをするかもしれない」と心配をするのは未来のことです。

過ぎ去った過去を悔やんで、まだ来てもいない未来のことを悩んでいます。


あるいは、痛い痛いと体の痛みに支配されて、いまこの瞬間に、他の臓器が静かに働き続けてくれていることや、呼吸を続けていることには思いが至りません。


このように私たちに備わっているマイナスの特性、つまり、過去や未来に注意が飛んでいってしまったり、体の症状に左右されて支配されてしまうといった特性を『マインドワンダリング(心のさ迷い)』といいます。


こうしたマインドワンダリングの状態にいる人は、気がかりなことに意識が飛んでいってしまっているため、ほとんどの時間を十分に意識しないまま過ごしています。

また、そうやって無意識に過ごしているため、今とらわれている不快な感覚以外の、体が発している様々な大切なサインにも気づけなくなってしまっています。

こうした無自覚な無意識は、私たちを機械的に、習慣的に、物事を見たり行ったりして過ごすという『自動操縦モード』にさせてしまいます。

それは自分に無理な負荷をかけ続けていくことになりますから、やがて、うつ病をはじめとしたメンタル不全の状態に陥ってしまうようなことも少なくありません。


この自動操縦モードから『手動操縦モード』に戻すことが、マインドフルネスです。
手動操縦モードになるということは、自分の意志で、意識的に、物事を見たり行ったりして過ごすことができるということです。

それによって私たちは、自分の体や心について深く知ることができるようになります。
体が伝えようとしているメッセージを読み取ることができるので、適切に対処できるようになります。

心をありのままに見ることができるようになって、自分の感情を無理せず自然に取り扱うことができるようにもなるのです。


マインドフルネスの具体的な実践方法に、瞑想があります。

ここでいう『瞑想』とは、よく言われるような「無になる」とか「悟りを開く」とかいうような大仰なものではありません。

“いま、この瞬間” の自分自身に、注意を集中させるだけです。
その指標として、呼吸に意識を向け、注意を集中させるのです。
その詳しいやり方については、次回、ご紹介しますね。


では、ここでもう一度、脳との関係に戻って説明します。




『マインドフルネス瞑想』をすることで、なぜ脳が変化するのか

マインドワンダリングの状態に陥ると、不安や恐怖を感じて、脳の中の扁桃体という部分が反応します。

すると、脳から身体に指令が出されて、腎臓の上にある副腎からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。
ストレスホルモンは心拍を早めたり、血圧を上げたりしてしまうので、心身に悪影響を及ぼします。

また、扁桃体が活発になることで、前頭前野が機能低下を起こします。
前頭前野は脳の司令塔の役割を果たしているため、機能が低下すると、冷静な思考や判断ができなくなってしまうのです。


ところが、最近の研究では、この状態にマインドフルネス瞑想が有効なことがわかってきました。

マインドフルネス瞑想が扁桃体の過剰な反応を抑え、それにより扁桃体のブレーキを緩めることができて、前頭前野の血流が増加し、機能が改善していくというのです。

それにより、再び現実を冷静にとらえることができるようになり、ひいては集中力や問題解決能力が上がっていきます。

ストレスも徐々に低減しますから、前向きに明るく穏やかに過ごすことができるようになっていきます。




以上のように、脳科学的にもしっかりとした裏付けがあり、エビデンスもたっぷりのマインドフルネス。
やってみない手はありませんよね。





最後に、『3分間呼吸』のエクササイズをご案内しておきます。
マインドフルネス瞑想の予行練習のようなものです。
ぜひ体験してみてください。


①座ったまま目を閉じて、力を入れずに背筋をまっすぐに伸ばします。

②呼吸に意識を向け、注意を集中します。

息を吸ったり吐いたりするときに、お腹の動きを感じながら、膨らんだら「膨らみ」、縮んだら「縮み」と合わせてください。

それが難しければ、「吸って吐いて」をワンクールとして、数を載せていくだけでかまいません。
吸って吐いたら1、吸って吐いたら2、吸って吐いたら3、、、というように。

③この状態を3分間続けてみてください。



いかがでしたか?
呼吸に意識を向けるというのは、初めてだとなかなか難しいかもしれません。
でも、毎日取り組んでいれば、必ず意識を向けることができるようになります。
大丈夫です。


まずは、 “いま、この瞬間” に意識を向けて、注意を集中させてみてください。
今日のこのエクササイズを皮切りに、二か月後には、あなたの脳は必ず変化しています。

ストレスフルな人達を対象に8週間のマインドフルネスプログラムを行い、その前後の fMRI画像を比べてみたところ、ストレス低減が見られた人は扁桃体が小さくなっていた、という2010年の研究もあるのですから。



“いま、この瞬間” に気づくことは、次の瞬間につながります。
そしてまた、その次の瞬間へと繋がっていきます。

今のあなたが案じている未来を変えられるのは、“いま” という瞬間を自分のものとして、意識的に生きるあなただけ、なのです。


f:id:rakuneko-naga:20200103033257j:plain